死んだ児の歳を数える

昔の新興市場の株価を整理するなど、死んだ児の歳を数えているなどと注文がつきそうだが、そうは思わずに過去を振り返ってみた。
21世紀の世界の株価指数で最も低迷しているのが東証マザーズ指数である。もとい、・・・だと思う(完全に調査しきっていない)。世界一がどうかは本質的ではないが、よくもここまで下落してなおかつ停滞したままであると思うが。
数字を上げると、マザーズ指数は2006年1月16日終値の2799.06を直近のピークに下落、1年9ケ月後の2007年9月18日の620.42が底となっている。ピークから底までの下落率は78%。マザーズ企業価値は2割強まで減ってしまった計算になる。
このピークの2006年1月16日は、ライブドア証券取引法違反容疑で特捜が家宅捜索を行った日であり、これを契機にマザーズ市場は総崩れになり、マザーズ指数は2月末までに37%下落した。その後も、村上ファンドの村上代表が証券取引法違反容疑で逮捕(2006年6月5日)、堀江貴文氏の東京地裁・初公判(2006年9月4日)というダウンサイドの出来事が続いた。加えて新興企業の不祥事が相次ぎ、2006〜2007年に粉飾・債務超過上場廃止したお騒がせの会社は十社に留まらなかった。アドテックス(2006年4月民事再生法申請、2006年5月上場廃止、元暴力団組長が経営陣に加わる)、ペイントハウス(2006年7月上場廃止、2009年6月コンサルタント会社社長が同社の架空増資容疑で逮捕)、TTG(2007年1月粉飾で上場廃止)の3社の引き起こした問題は、これが公開会社かと疑うばかりのものであった。
マザーズ指数の原数値は以上のとおり、上段のグラフのとおりであるが、マザーズ日経平均を比べてみよう。下段のグラフは、(マザーズ指数/日経平均株価)、つまりマザーズ指数の相対株価(2004年1月=1)を2004年から現在まで追ったものである。マザーズ相対株価は、原数値と同様に、ライブドア事件が世に明らかになった2006年1月16日から2007年9月下旬まで下落し、相対株価は1.4から0.3まで低下した。

何を当然のことをと言われるかもしれないが、日本のVC投資の低迷はここにある。あるいは、これで大方説明できるのではないか。VCの期待収益率が7割下がったと考えればよい。VCの審査会で新規投資案件の予想回収倍率を計算すると(私の知りうる限りでは)3倍どころか1.5倍にしかならない案件(?)がゾロゾロあるという。
VC業界では周知のことであるが、一般に知られていることではないので、きっかけもないけれども整理してみた。怨むべくはホリエモンと不祥事企業の役員達、そしてIPOした直後にもかかわらず業績計画を達成できなかった新興企業であるが、市場経済に成り立つビジネスゆえに投資家はすべからく結果責任を負う。
「愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る」と言うナポレオンと、「過去を遠くまで振り返ることが出来れば、未来を遠くまで見渡せる」のチャーチル。ここはチャーチルに倣おうと。