ベンチャー、ベンチャーキャピタルの情報データベース

未公開企業やベンチャーキャピタルに関する情報蓄積やデータベースが必要で、それが業界発展に資するという指摘も出ている。國學院大學の秦信行先生は、「望まれるVC投資データの整備」というコラムを寄稿されている。
確かに、日本ではベンチャー企業ベンチャーキャピタルとも、使いやすく有益で便利なサイトがないようだ(要求水準が高すぎる?)。しかし、個別の企業・ファンド財務情報を入手するのは当該企業の立場からすれば、公表することはまず望まず、データを集めて整備するのは公開企業のようにはいかない。
理由がよくわかっていないが、アメリカはここ2-3年で無料の情報サイトが発展している。筆者が調査で使っているデータベースだけであるが、以下で紹介したい。全体としては、広く多数の会員が個々の情報を持ち寄って無報酬で情報データを構築するWikipedia Styleを取っており、サイト運営者が自分等で情報収集していないケースがほとんどである。無報酬でデータ情報を提供するインセンティブがどこにあるのかは不明であり、また当然無報酬だけに情報の正確性は保証されていない。
(1)CrunchBase
・Venture、Venture Vapital、Entrepreneur、Angelに関する情報サイト。
・Tech Crunch(ハイテク情報メディア、本社サンフランシスコ、9月にAOLが買収)が運営。
・例えば、Twitterは当然未公開企業で財務情報は同社から公表されていないが、CrunchBaseのこのサイトで増資実績、出資者、時価評価額、買収実績ほかを見ることができる。
・また、ベンチャーキャピタルについてこのサイトをみると、Sequoia Capitalの投資状況やファンド設立状況が個別に掲載されている。さすがに個別のファンド・パフォーマンスは出ていない。
・面白いのは、主だったAngelについての情報が豊富であること。例えばネット関連のAngel投資家で名をはせているReid HoffmanPayPal→LinedInのCEO→Greylock Partners)の投資先をここで見ることができる。
(2)VentureBeat
・(1)と同様に、Venture、Venture Vapitalに関する情報サイト。
・例えば、最近DeNAが買収を発表したngmocoについては、このサイトで増資実績、出資者、時価評価額、買収実績ほかを見ることができる。
・また、User Opinions:Bulls vs. Bearsという項目で読者の企業評価投票をやっており、この評価が専門家レベルのコメントもありなかなかの内容である。
・VCに関する情報データは上記のCrunchBaseに比べると今一つの印象である。
(3)PEHUB
・トムソンロイターの運営する未公開ベンチャー、VC、PEの情報交流サイト。各地の専門家・ブロガーを集めて情報を書き込ませ、それをPEHUBが編集・配信するデータベースの方式。
・基本情報は無料だが、詳細な情報・ニュース・データ類は有料方式(個人の場合は年195ドル)。

そのほか、有料の情報サイトであればThomson RoutersやFund Advisor機関が投資企業向けに高い会員料で洗練された情報やデータベースを提供しているが、以上では無料サイトに限って説明した。

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ベンチャーキャピタル・ファンドのパフォーマンス・データは、NVCA(米国ベンチャーキャピタル協会)が加盟するVCの全運営ファンドについて、リターンに関するデータを四半期毎に集計して平均値と中央値を公表しているが、個別ファンドの情報は公開していない。
しかし、個別ファンドのパフォーマンス情報も、主だったものは入手できる。これは、VCファンドの大口投資家のうち年金基金や大学等の公的機関がVCファンドの個別運用成績の開示である。開示の理由は、個別ファンドの情報開示について、2002年から2005年にかけて関与者から非開示を連邦情報公開法の違反として提訴される事例が出てきたことが背景にある。これら一連の訴訟において提訴者との間で合意が成立した結果、以降は公的機関の投資した個別ファンドのパフォーマンスが運用報告書やインターネットのサイトで定期的に開示されるようになっている。この経緯や個別パフォーナンスの内容については後日記載することとしたい。