F社へのベンチャー投資

上場していたF社の粉飾決算は、株主提訴にまで発展したようです。

一部の方にしか知られていませんが、F社に投資した20社を超える機関投資家(国内外のベンチャーキャピタルや投資会社)は、事件が顕在化する前の株価でも「ほとんどもうかっていなかった」ことが、下に作成した公開前+後を合併した株価チャートをみればわかります。
本案件はVC投資としては成功ではなく、IPOを実現して少しもうかる程度のものでした。さらに事件発生後は大変なことになりましたが。

図でわかるように・・・、
★①と②の第三者割当増資(2006/12/1、2008/8/29。取得コスト@1245円)で株式取得した投資家は、IPO以降株価が取得価格を下回っている。これ以降③〜⑤の増資でdownround(増資単価下落)が発生し、①②投資家は株価引き下げを余儀なく承諾した構造(VC投資としては▲評価)。

★③、④、⑤の第三者割当増資(2009/6/26、2009/7/10、7/21。取得コスト@555円)の投資家は、IPO以降、株価は取得コストより30〜40%程度高く推移。しかし到底2倍にはならない株価水準。
ということです。

未公開段階での取得価格とIPO後の株価をみると、F社へのベンチャー投資は、よくある典型的な日本のVC投資のキャピタルゲイン・モデルと感じた次第です。

ただし、同社公表資料で記載されていない2006/11以前に投資家についての損益分析は公表データがないので不明です。また創業者等の新株予約権行使価格は上の増資単価よりはるかに低いことを申し添えます。


なお、取り巻く状況から、実名で記述するのは適切でないと判断し、個社名は示しません。
また、以上の分析の正確さをブログ著者が保証するものではありません。